コラム

その疲れやすさ、肝臓からのSOSかも!?

2025年06月30日

慢性肝臓病をご存じですか?

肝臓は症状が現れにくい臓器のため、異常があっても気づかずに過ごしてしまうことが少なくありません。従来、肝臓の詳しい状態を調べるには体への負担が大きい検査が必要でしたが、近年の医療技術の進歩により、患者さんに優しい方法で正確な診断ができるようになりました。今回は、慢性肝臓病の早期発見・診断に役立つ超音波検査についてご紹介します。

日本肝臓学会による慢性肝臓病の普及啓発活動

皆さんは慢性肝臓病について、どのような認識をお持ちでしょうか。一般社団法人日本肝臓学会は、肝臓学に関する研究、知識の交換等を行い肝臓病の治療発展に寄与する専門団体として、2023年奈良での全国学会において慢性肝臓病の普及啓発を行いました。まずは、肝臓の健康状態を知るための基本的な検査値から見ていきましょう。

 

ALT(GPT)とは? ~肝障害を知る重要な指標~

ALTはGPTとも呼ばれ、アミノ酸代謝に関与する酵素で肝臓の細胞の中に特に多く存在します。肝臓の細胞が壊れると血液中に放出され濃度が上昇するため、肝障害の指標として広く利用されています。人間ドック、健診、献血時などで検査され、正常値は30 IU/L以下とされており、この範囲内であれば健常な状態と判断されます。

「沈黙の臓器」肝臓の特徴

肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、症状が出にくく疲れやすい、顔色が悪い、お腹が張ったといった症状が出てから受診したときには肝硬変まで進行していたということも少なくありません。

 

慢性肝障害の診断について

慢性肝臓病の原因はウイルスやアルコール、自己免疫性疾患、脂肪蓄積など様々でその検査は多岐にわたりますが、病態の本質は肝細胞の線維化といわれています。

従来の診断法の課題

従来より肝線維化の診断は、肝臓に細い針を刺し細胞を顕微鏡で観察する肝生検で行われてきましたが、この検査は入院が必要で患者さんの体への負担も大きいことが問題でした。

 

超音波検査で肝線維化の程度を予測することが可能に

腹部超音波検査は医療機関に広く普及しており、通常の人間ドックや企業健診で標準的に行われていますが、新たな機能として組織の中を伝わる音波の速度を計測することができるようになりました。慢性肝臓病において線維化が進行した肝臓=硬い肝臓は音波がより早く伝わります。
この検査は外来で、腹部超音波検査の合間に1~2分程度で施行可能です。患者さんの体への負担もありません。気になる方は主治医にご相談ください。

 

 

慢性肝臓病の原因は時代とともに変化しています

かつて慢性肝臓病の原因のほとんどは肝炎ウイルスとアルコール多飲でした。しかし、近年の検査方法の向上と新たな治療法の確立により、肝炎ウイルスを原因とする肝硬変(慢性肝障害の終末像)は減少しています。一方で、新たな原因として脂肪沈着による肝炎であるNASH(非アルコール性脂肪肝炎)の割合が増えてきました。

肝硬変の成因の推移
日本における15年間の推移(2007年〜2021年)

データ出典:Enomoto H, et al. J Gastroenterol. 2020 Mar;55(3):353-362
※原著データを基に作成

C型肝炎(HCV)
58.6% → 23.4%
大幅減少
アルコール性
13.7% → 35.4%
最多原因に
NASH
2.0% → 14.6%
急激な増加
B型肝炎(HBV)
13.6% → 8.1%
減少傾向

◎肝臓の健康を守るために

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるように、病気になっても症状が出にくい特徴があります。そのため、年に一度の健康診断を受けて、肝臓の状態をチェックすることがとても大切です。
当院では経験豊富な超音波検査士が2名在籍しており、超音波検査機器を使って、肝臓の硬さや脂肪のたまり具合を数値で正確に測定できます。
健康診断で肝臓の数値に異常があると言われた方、お酒をよく飲む方、最近疲れやすいと感じる方は、お気軽にご相談ください。

 

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