ボツリヌス治療
ボツリヌス治療(ボトックス注射・ゼオマイン注射)
とは
脳卒中を発症すると約6割の方に筋肉が固くなる「痙縮」という症状が発生します。
この痙縮という症状は脳卒中発症後から3カ月で約2割の方に発生し、6カ月では4割の方に発生します。中枢神経系である脳の錐体路や脊髄の運動線維路であっても生じてきます。麻痺の症状が軽ければ、徐々に消失していきますが、中等度から重度では痙縮は残存してしまいます。
目に見える症状として上肢・手指では曲げる姿勢をとり(屈曲位)、下肢では伸ばす姿勢を取る現象(伸展位)が起こります。これは無意識に運動が生じて自分の意識や力だけでは、中々思うように改善することは難しいです。
一言で痙縮を表現すると、速度依存性に筋緊張が高まることです。手指を素早く動かすと、緊張が高く、伸展に抵抗が見られますが、ゆっくりと動かすと抵抗なく、伸展できる様になります。これが痙縮です。
リハビリを行うにあたっても、動きを良くしたい関節においてこの筋肉の硬さが訓練を邪魔してくるようになります。リハビリを行う療法士と患者の大きな障壁となっております。
近年、この痙縮の治療において様々な治療法が実施されております。
①筋肉に対する電気刺激療法、②内服による薬物療法、③神経に薬剤を注射する神経ブロック注射、④脊髄の周囲(髄腔)に痙縮を和らげる薬を直接投与する髄腔内バクロフェン療法、そして⑤ボツリヌス毒素製剤を用いたボツリヌス治療です。
正式名称はA型ボツリヌス毒素製剤と呼ばれ、注射剤として使用されております。現在日本では、ボツリヌス毒素製剤は2種類あります。ボツリヌス治療は即効性が高く、一度注射を行うと痙縮を起こしていた筋肉は2・3日後には柔らかくなり、3カ月間は持続する効果が見られます。
適応症状
- 上肢、下肢痙縮
- 痙性斜頸
- 眼瞼けいれん
- 下肢痙縮による尖足
- 片側顔面けいれん
- 脳性小児麻痺による尖足
ボツリヌス毒素の作用機序
筋肉が収縮する(力が入る)際、神経から筋肉に対してアセチルコリンという伝達物質が放出されますが、ボツリヌス毒素はそのアセチルコリンの放出を阻害して、余分な筋収縮を抑える働きがあります。
治療の流れ
01
外来診察にて
状態の確認・評価
02
投与量・投与日の決定と予約
03
投与
04
1~2週間の集中的な
リハビリテーションの実施
05
定期的に
状態の確認・評価
06
次回、投与の
必要性を検討
当院におけるボツリヌス治療の工夫
ボツリヌス治療を行いたいが、注射の痛みが苦手という方も多いと思います。当院では、患者さんの痛みが最小限になるよう、針の太さを変えたり、表面麻酔薬を使用して痛みの緩和につとめています。また皮膚から奥の筋肉にボツリヌス製剤を施注する時には筋電図やエコーを使用し、適切な部位に施注できるよう努めております。
ボツリヌス治療後は何をしたらいい?
ボツリヌス治療後に重要なことは、やはりリハビリです。注射を行った筋に対してストレッチを行い、可能な範囲で自力で動かすことが大事です。特に注射後、3時間以内にリハビリや自主訓練を行うとこで、よりボツリヌス治療の効果を高めることができるといわれております。また、注射後の当日に注意することとして、熱いお風呂屋やサウナなど高温を避けること、施注部位を強く揉みこまないで下さい。
主な治療の対象
痙縮をほっておくと、関節が完全に固まってしまったり、手指衛生が保てず悪臭を起こすことがあります。
また、服の着替えが困難になったり、歩行障害が増悪し、転倒する危険性が高くなります。
主に脳卒中発症後6カ月以降でボツリヌス治療を行うことが多いですが、発症後1~2カ月以降での治療も推奨されてきております。
こんな方は相談してみてください。