コラム

入院が原因で認知症が発病することはあるの?

2023年07月29日

入院をしたら認知症になった?!

皆さんは、「入院をしたら認知症になった」と言うお話を聞いたことはありませんか?
入院したことが原因で認知症が発病することがあるのでしょうか。

ゆっくりと進行していた認知症が入院をきっかけに急激に現れる

認知症の前の段階とされる軽度認知障害(MCIMild Cognitive Impairment)は現状では認知症とされるほどではなく、日常生活に困難をきたす程度でもない病態です。

「ここ最近、物忘れが多くて…認知症は大丈夫でしょうか」などの質問はよく聞かれますが、まさに軽度認知障害(MCI)である可能性があります。

こうした患者さんが入院中の骨折による疼痛、肺炎等の炎症反応、さらに慣れない環境変化などで多大なストレスがかかり、これまではゆっくりと進行していた認知症が急激に現れることが原因と考えられています。認知症は一度発病すると、基本的には認知機能が戻らず進行していくのが特徴です。

認知症は多くの場合、徐々に進行するものであり、健常であった方が入院をきっかけに突然、認知症になることはないと言えます。また、入院中には一時的に認知症に似た症状、せん妄が起こることがあり、認知症と対比して考える必要があるでしょう。

 

認知症によく似た症状、せん妄をご存知ですか?

せん妄とは環境や体調の変化で一時的に起きる“強い寝ぼけ”のような症状です。数分前はせん妄状態だったのに、すぐに正常に戻ったなんてこともあります。

せん妄の原因

せん妄の原因はさまざまであり、手術後の発熱・激しい痛み・不眠や不安・薬剤の影響・慣れない環境・体調不良などがあります。

 

せん妄の特徴

せん妄は身体に負荷がかかりやすい高齢者をはじめ、過去に脳卒中を起こした方、認知症やパーキンソン病の方は生じやすいのが特徴です。また、通常とは異なる状況に置かれることで若い方でも発症することがあります。

せん妄状態に陥ると錯乱して転倒したり、点滴を自己抜去したりとさまざまなトラブルを引き起こしますが、大半は数日以内で改善していきます。

 

せん妄と認知症の違い

せん妄と認知症、大きな違いは症状が一時的であるかどうか

せん妄の症状は認知症と似ていますが、まったく異なるものです。その大きな違いは症状が一時的であるかどうか。せん妄は突然発症し、数時間から数週間にわたり症状が継続しますが、時間と共に症状が変化します。

 

せん妄は突然発生、認知症はゆっくり進行

また、せん妄は突然発生し、多くの場合いつ始まったのかをはっきり特定できますが、認知症は一般にゆっくり進行し、いつ始まったのか特定することは難しいとされます。 入院中に、せん妄と認知症が同時に発生することもあります。

 

せん妄の予防法

入院前に準備できること

入院時には普段使っている眼鏡や補聴器は忘れずに持参しましょう。日にちや時間を確認しやすくするために時計やカレンダーを置くこともお勧めです。また、家族やペットの写真、使い慣れたタオルなども安心感につながることでしょう。お酒を飲まれる方は、入院までにできるだけ飲酒量を減らすことも大切です。

せん妄は身体への負担を原因とする脳の機能の乱れです。予防のためには負担となる問題をできる限り取り除くことが重要です!

 

 

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