コラム

調べて知って、今後の健康習慣に役立てよう。

2023年10月31日

はじめに

健康診断の結果をみて、血液検査の数値は気になるところですよね。今回は主な血液検査の項目をピックアップ。
血液検査でわかることは多くあります。基準値から外れてしまったところをご自身で調べて知って、今後の健康習慣に役立てましょう。

注意事項

健常人の95%の方が基準値に含まれますが、基準値は必ずしも正常値ではありません。言い換えれば健康であっても5%の人が基準値から外れることになります。ひとつの検査だけを見て判断するのではなく、健康診断は総合的に見て判断する必要があるため、自己判断せずに詳細はかかりつけの医師へご相談ください。

 

肝臓系検査

総タンパク(TP)

基準値 6.5 – 7.9 G/DL


■この検査で疑われる病気
高値:慢性肝炎、脱水症、多発性骨髄腫など
低値:肝硬変、低栄養、ネフローゼ症候群など

ほとんどの病気で値が変動するため、もっとも基本的なスクリーニング検査として使われます。
特にタンパク質の合成に関わる肝臓や、排出に関わる腎臓の疾患で変動しやすい検査項目です。

 

アルブミン

基準値 3.9G/DL以上


■この検査で疑われる病気
低アルブミン血症では肝硬変、ネフローゼ症候群、低栄養状態などが疑われます。

アルブミンは血液中の主要なタンパク質で、肝臓で生成されます。
血管内の浸透圧維持や物質の運搬・保持など重要な役割があり、低下するとむくみや水分貯留を起こしやすくなります。
栄養状態の指標となっており、低値時は治療や食事内容の見直し、定期検査が重要となります。

 

AST(GOT)とALT(GPT)

基準値 AST:30U/L以下 ALT:30U/L以下


■この検査で疑われる病気
ALTよりASTが高値:アルコール性肝炎、肝硬変など
ASTよりALTが高値:急性・慢性肝炎、脂肪肝など
ASTのみ高値:心筋梗塞、多発性筋炎、溶血性貧血など

ASTとALTは肝臓の機能を調べる血液検査の項目で、肝臓に障害があると血中濃度が上昇します。
ALTの上昇よりASTの上昇の方が大きい場合は急性肝炎など肝臓に急激なダメージが疑われ、ALTの上昇の方が大きい場合は慢性的な肝臓へのダメージが疑われます。

 

γ-GPT

基準値 50U/L以下


■この検査で疑われる病気

アルコール性肝障害、閉塞性黄疸、胆石症、肝炎、急性膵炎など

アルコールを飲む方はγ-GTPは上昇しやすく、飲酒量と関係があります。
しかし、飲酒以外の要因でも上昇することがあり、AST、ALTなどの検査結果と合わせて診断する必要があります。
高値の場合は原因を特定し、アルコール性肝障害か他の疾患かを判断する必要があります。適切な治療のためにも、まずは原因の特定が重要です。

 

腎臓系検査

クレアチニン(Cr)

基準値 男性:0.61~1.04mg/dL以下
女性:0.47~0.79mg/dL以下


■この検査で疑われる病気

高値:糸球体腎炎、腎機能障害
低値:筋ジストロフィーなど

クレアチニンは腎臓でろ過されて尿として排泄されます。
クレアチニン値が高い場合、老廃物のろ過が不十分で腎機能低下が疑われ、原因として糖尿病や高血圧などの生活習慣病が考えられます。
また、クレアチニンの数値は筋肉量に比例するため、男性は女性よりもクレアチニンの数値が高くなることがあります。
腎臓の機能は老廃物の排泄、水分調整、電解質のバランス維持など多岐にわたり、腎機能低下は重大な影響があります。症状が現れにくいため定期検査が重要です。

 

eGFR(イージーエフアール)

基準値 60.0mL/min以上


■この検査で疑われる病気

慢性腎臓病(CKD)

eGFR(推算糸球体濾過量)は、腎臓の糸球体での濾過機能を簡易に測定する検査です。
値が低いほど腎機能が悪いことを示しており、慢性腎臓病(CKD)の診断や重症度判断に利用されます。
CKDの重症度はG1からG5の5段階に分類され、eGFR値から判断します。

■慢性腎臓病(CKD)の重症度分類

腎機能区分 腎臓機能 eGFR
G1 正常または高値 ≧90
G2 正常または軽度低下 60~89
G3a 軽度~中等度低下 45~59
G3b 中等度~高度低下 30~44
G4 高度低下 15~29
G5 末期腎不全(ESKD) <15

G3a以上:軽度から中等度では医療機関受診が推奨されます。
G4以上:高度以上では腎臓専門医の受診が必要です。
eGFRが正常値でも尿検査で異常があった場合は腎臓専門医への受診が必要な場合がある為、かかりつけ医へ相談しましょう。

 

尿酸(UA)

尿酸

基準値 2.1~7.0mg/dL


■この検査で疑われる病気

高値:高尿酸血症(痛風)、腎不全など

尿酸は「プリン体」という物質が体内で分解されてできる老廃物です。
腎機能低下やプリン体の多い食品の過剰摂取などで血液中の尿酸値は高くなります。
尿酸値が高い状態が続くと、結晶が関節に沈着して痛風発作を引き起こすリスクが高くなります。

 

脂質系検査

HDLコレステロール

基準値 40mg/dL以上


■この検査で疑われる病気

脂質異常症、動脈硬化症など

HDLコレステロールは善玉コレステロールとも呼ばれ、血管壁の余分なコレステロールを回収して肝臓に運ぶことで動脈硬化を防ぐ働きをする役割がある重要な脂質です。
低値となる原因は喫煙、運動不足、肥満などがあげられます。

 

LDLコレステロール

基準値 60~119mg/dL


■この検査で疑われる病気

高値:脂質異常症、動脈硬化症、甲状腺機能低下症など
低値:甲状腺機能亢進症、肝硬変など

LDLコレステロールは全身にコレステロールを運ぶ役割があります。
増えすぎると動脈硬化の原因となるため「悪玉コレステロール」と呼ばれています。

 

中性脂肪(TG)(トリグリセリド)

基準値 30~149mg/dL


■この検査で疑われる病気

高値:脂質異常症、脂肪肝、動脈硬化症、甲状腺機能低下症など
低値:低栄養、甲状腺機能亢進症など

中性脂肪は体のエネルギー源となる脂肪の一種です。
食べ過ぎ、アルコールの飲み過ぎ、肥満などで値が高くなり、動脈硬化の発症や進行と関係があります。

 

Non-HDLコレステロール

基準値 90-149 mg/dL


■この検査で疑われる病気

高値:動脈硬化、脂質代謝異常、甲状腺機能低下症、家族性高脂血症など
低値:栄養吸収障害、低βリポ蛋白血症、肝硬変など

Non-HDLコレステロールは総コレステロールからHDLコレステロールを引いたもので、動脈硬化リスクを総合的に評価します。
高値は動脈硬化などのリスクが高いことを表しており、低値では栄養吸収障害などが疑われます。

 

糖代謝系検査

血糖値(FPG)

基準値 99mg/dL以下


■この検査で疑われる病気

高値:糖尿病、慢性膵炎
低値:甲状腺機能低下症、下垂体機能低下症など

100-109mg/dL 正常高値であるが、糖尿病の可能性がある
110-125mg/dL 糖尿病予備軍(境界型)とされる
125mg/dL以上 HbA1cが6.5%未満で、症状がない場合でも糖尿病の可能性が高く、早期受診が必要

 

HbA1c

基準値 5.6%未満(NGSP値)


■この検査で疑われる病気

高値:糖尿病、腎不全
低値:溶血性貧血など

ヘモグロビンA1c(HbA1c)は、赤血球のタンパクであるヘモグロビン(Hb)にグルコースが結合した糖化ヘモグロビンの一つです。
血液検査においてHbA1cは1-2ヶ月の平均血糖値を反映する指標で、高いほど糖尿病のリスクが高いと言えます。
糖尿病であっても生活習慣の改善と医師の指導により、血糖値をコントロールできる可能性は十分にあります。

 

血球系検査

血色素(Hb)(ヘモグロビン)

基準値 男性:13.1~16.3g/dL
女性:12.1~14.5g/dL


■この検査で疑われる病気

高値:多血症、脱水
低値:鉄欠乏性貧血、慢性出血性貧血など

多血症の症状は、頭痛、めまい、息切れ、疲労感、手足のしびれ、腕や足のむくみなどがあります。 原因は高山病や喫煙、肺疾患などの低酸素状態が長期間続いた場合などや腎臓病などの疾患が原因となります。
貧血は、何らかの原因によって赤血球に含まれる血色素(ヘモグロビン)の量が減ることです。男女ともに10g/dl以下になると、「中等症から重症の貧血」で、頭痛やだるさ、肩コリなどの症状を引き起こし、息切れやめまいなども現れてきます。

 

MCV・MCH・MCHC

基準値 MCV:85~102fL
(赤血球1個当たりの平均的な大きさ)
MCH:28~34pg
(赤血球1個当たりの平均ヘモグロビン量)
MCHC:30.2~35.1%
(赤血球1個当たりの平均ヘモグロビン濃度)


■この検査で疑われる病気

[MCV高値・MCHC正常]
・ビタミン欠乏性貧血
・葉酸欠乏性貧血
・過剰飲酒
[MCV正常・MCHC正常でも貧血の場合]
・再生不良性貧血
・腎性貧血
・溶血性貧血
・急性出血
[MCV低値・MCHC低値]
・鉄欠乏性貧血
・慢性炎症
・鉄芽球性貧血など

貧血の診断に用いられ、赤血球の状態から貧血の種類を推測できます。例えば、赤血球が小さくヘモグロビン量が少ないと鉄欠乏性貧血の可能性が高くなります。

 

白血球(WBC)

基準値 3.1~8.4×/µL


■この検査で疑われる病気

高値:細菌感染、心筋梗塞、がん、白血病など
低値:骨髄異形成症候群、ウイルス性感染症、薬剤アレルギーなど

細菌やウイルスなどの感染症の有無や免疫能、さらに血球を産生する骨髄の機能などがわかります。
白血球の数が増えている場合、体内のどこかで炎症や病気があることを示します。

 

血小板数(PLT)

基準値 14.5~32.9×/µL


■この検査で疑われる病気

高値:鉄欠乏性貧血、血小板血症、慢性骨髄性白血病など
低値:特発性血小板減少性紫斑病、急性白血病、肝硬変など

血小板は出血したとき、その部分に粘着して出血を止める役割を果たしています。血小板が高値になる原因として多くの方は鉄欠乏や炎症によるものです。
血小板数が基準値より下がった場合、肝臓の障害が疑われます。肝炎や肝硬変などで肝臓の線維化が進み肝臓が固くなると、血小板の産生量は減少します。
また、肝臓の血流が悪くなると、血小板が破壊される量が増え、数値が下がります。その他、白血病などの血液の病気でも数値は下がります。

 

感染症系検査

CRP

基準値 0.30mg/dL以下


■この検査で疑われる病気

・細菌・ウイルス感染症
・リウマチ熱
・関節リウマチ
・心筋梗塞など

CRPの上昇は体内の炎症を示しますが、炎症部位を特定することはできません。
正確な病態を把握するためには、他の検査結果や症状なども考慮する必要があります。
異常値が出た場合は内科受診が勧められます。

 

まとめ

血液検査では肝臓機能、腎臓機能、脂質代謝、糖代謝、貧血、感染症など様々なことを調べることができます。基準値は参考値であり、複数の検査結果と症状を総合的に判断する必要があります。異常値が認められた場合は自己判断をせずに医師の判断を仰ぎ、定期検査と早期発見に努めましょう。

 

 

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