骨粗しょう症外来

骨粗しょう症とは

加齢などが原因で骨の密度が低下して“スカスカ”になってしまい、骨折しやすくなった状態をいいます。 骨粗しょう症は目に見えないため、骨折してしまってから分かることが多い病気です。

また骨粗しょう症になって一旦骨折を起こすと、連続して様々な部位で「骨折の連鎖」が起きると言われています。

骨粗しょう症

骨粗しょう症の分類

骨が弱くなって骨粗しょう症となってしまう原因によって、原発性と続発性に分類されます。

① 原発性骨粗しょう症

加齢や閉経によって起こる骨粗しょう症です。高齢になると腸管からのカルシウム吸収が低下します。さらに活動性が低下して日光に当たることが少なくなると、ビタミンD(腸管からのカルシウム吸収に必要)が不足してしまい骨密度が低下します。また女性ホルモンであるエストロゲンは、骨が壊れる「骨吸収」を防ぐ作用があります。閉経によってエストロゲン分泌が低下すると「骨吸収」がどんどん進んでしまい、骨密度が急激に低下します。そのため、女性の方が男性よりも、加齢によって骨粗しょう症を発症しやすくなります。

年齢と閉経に伴う骨量の変化

② 続発性骨粗鬆症

骨密度の低下をきたす基礎疾患や薬剤、長期臥床など、骨粗しょう症をきたす原因がある場合、続発性骨粗しょう症といいます。基礎疾患としては副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能亢進症、糖尿病、関節リウマチなど、薬剤としてはステロイド、抗てんかん薬、メトトレキサート(免疫抑制剤)、ワルファリンやヘパリン(血をサラサラにする薬)などがあります。

なぜ治療が必要か

骨粗しょう症になると、股関節(大腿骨近位部骨折)や、背骨(椎体骨折)、手首(橈骨遠位端骨折)、肩(上腕骨近位端骨折)などが骨折しやすくなります。特に大腿骨近位部骨折は歩行困難となり「寝たきり」になるリスクが高いため、多くの方は手術が必要になります。

また、介護が必要になった原因のうち、「骨折・転倒」は12.5%を占めています。

つまり、骨粗しょう症を治療して骨折を予防することで、「寝たきり」を防ぎ、健康寿命(健康で自立した生活ができる期間)の改善を期待できます。

レントゲン画像

介護が必要になった理由

骨粗しょう症外来とは

骨密度が減っても痛みなどの自覚症状がない骨粗しょう症を早期に発見するために骨密度検査などを行い、骨折リスクに応じて生活指導や薬物療法を実施し、骨密度の回復を目指し、骨折を予防します。

骨粗しょう症の診断

日本では、「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」の診断基準が使われています。
骨密度を測定し、20~44歳の若年成人平均値であるYAM(young adult mean)と比較します。
以下に該当する場合、骨粗しょう症と診断されます。

  • 椎体骨折または大腿骨近位部骨折がある場合
  • 橈骨遠位端骨折、上腕骨近位端骨折、肋骨骨折、骨盤骨折などが軽微な外力で発生しており、骨密度がYAMの80%未満である場合
  • いままで骨折の既往がないが、骨密度がYAMの70%以下である場合

椎体骨折または大腿骨近位部骨折がある場合は、骨密度の数値に関わらず骨粗鬆症と診断されます。また骨密度は若年成人と比較することが重要で、
年齢相応だからといって大丈夫ではありません。

検査

① X線(レントゲン)検査

X線検査を行い、現在あるいは過去に生じた骨折の有無を調べます。

② 骨密度の測定

微量のX線をあてて骨密度を正確に測定する、DEXA(Dual Energy X-ray Absorptiometry)法がガイドラインですすめられています。
当院では最新のX線骨密度測定器(ホロジック社Horizon)を導入しており、DEXA法で骨密度を高精度に測定できます。この機器は骨密度だけでなく、骨の質(骨の微細構造)を評価できるTBS(Trabecular bone score)も測定することができます。撮影台に横になるだけで測定が可能で、痛みもなく短時間で検査は終了します。

骨密度の測定

③ 血液検査

骨の状態の指標になる骨代謝マーカーや、血中のカルシウム値、ビタミンD、腎機能などを検査し、治療薬を検討します。

治療

当院で処方している主な治療薬と注意点についてご説明します。

1.骨を壊す働きを抑える薬(骨吸収抑制薬)

①ビスホスホネート製剤

起床時にコップ1杯の水で飲み、服用後少なくとも30分は横にならず、水以外の飲食並びに他のお薬の内服も控えてください。
週1回または月1回の内服薬、月1回または年1回の注射薬があります。副作用で、抜歯後にあごの骨が壊死する顎骨壊死がまれに起こるため、口腔内の清潔を保つことと、抜歯前後の休薬の検討が必要です。

②選択的エストロゲン受容体作動薬

女性ホルモンのエストロゲンに似た作用があり、1日1回食後に内服します。副作用で静脈血栓症があるため、既往がある方は使用できません。

③ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤

半年に1回皮下注射します。ビスホスホネート薬よりも強力な骨吸収抑制効果があります。腎臓の障害がある方でも使用することができます。副作用で顎骨壊死があるため、抜歯前後の休薬が必要です。低カルシウム血症が起こることがあり、ビタミンDの内服併用や定期的な採血が必要です。

2.骨を作る働きを促す薬(骨形成促進薬)

①副甲状腺ホルモン製剤(PTH)

新しい骨を作る「骨形成」を促進し、骨量を増やします。週1回病院で注射する薬、週2回自己注射する薬、1日1回自己注射する薬があります。骨密度が非常に低い方や、骨折リスクの高い方に用いられます。高カルシウム血症や気分不良などの副作用があります。投与は最大2年間と決められています。

②抗スクレロスチン抗体製剤

月に1回病院で皮下注射し、最大1年間使用します。骨を壊す働きも抑えるため、強力な効果が期待できますが、副作用を防ぐため、過去1年間のうちに心筋梗塞や脳卒中などにかかられた方は、使用を控えます。

3.骨に足りない栄養を補う薬

①活性化ビタミンD3製剤

ビタミンDは腸管からのカルシウム吸収を促す作用があり、1日1回食後に内服します。高カルシウム血症の副作用があり、定期的に血液検査が必要です。

②ビタミンK2製剤

ビタミンKには骨をつくる働きを強め、骨を壊す働きを弱める作用があります。抗凝固薬であるワルファリンを内服中の方は併用できません。

最後に

骨粗しょう症は目に見えず、骨折してしまった後に後悔する病気です。
特に女性の方で骨密度が気になる方や、過去に骨折を起こしたことのある方は、お気軽に整形外科外来までご相談ください。